ご挨拶
審査実務を開始してから半年が経とうとしています。この半年間で、各方面より様々な厳しいご意見や励ましのお言葉などを頂戴し、それらを真摯に受け止めながら毎日の業務に活かしております。今月からは本格的にこれまでの業務を見直し、旧習に囚われない今の時代に合致したものに置き換え、より良い審査を求めているところでございます。
発足時には、業界内の審査機関として、国内における動画配信関連事業の健全な発展と映像文化の普及向上を促進し、映像配信が中心となった現在の社会状況に沿った判断を行う組織として活動すると宣言し、現時点で許容されうる自由度と制限を追求し、今の社会の要請に沿った組織として活動を行なうとご挨拶させていただきました。
また、当ネットワークの目的を、国内の映像文化の発展に寄与すること及びインターネット時代における国境を越えた配信事業も視野に入れ、海外戦略も同時に推進し、世界の映像文化の発展にも寄与することを掲げました。
その実現のために、刻々と変化する社会状況を見極めながら、変化こそが成長の証しと捉えて前に進み続けてまいります。
コンセプト
審査について
配信映像審査ネットワークは、制作者の立場からの「表現は自由である」ことを汲み取りながら、一般社会の立場からの「適正な制限は必要だ」という意見をぶつけ合い、どこまで制限が必要なのかを有識者及び多くの民間人の間で討議を重ね、辿り着いた結論に沿って「自由」と「制限」の間に線引きを行い「審査判断基準」を設けています。 その前提として、本成人向け映像は個人が自分の意思で作品を購入し一人で楽しむ嗜好品である、ということがあります。購買する際には厳格な年齢確認を行い、未成年には販売することはなく、また販売方法においても見たくない人が偶然にも見えないように施され販売されていて、その上で、映像内の社会性(社会に及ぼす影響等)、わいせつ性(エロティシズム及びモザイクの濃淡等)、児童ポルノ性(児ポ法に抵触しないこと等)、犯罪誘発性(犯罪の誘因にならないこと等)などを鑑みて、適正な判断基準を策定しています。
判断基準については、一般社会の価値観の変容とともに同時に変化するものと考え、頻繁な意見交換を行い逐次見直しするとともに、判断する上での解釈についても人それぞれであり、多様性を受容しつつ適切に判断することを求めてまいります。判断の枠組みも柔軟性のあるものとし、広範な意見を拾いながら偏りのないものにしていきます。
制作者は制作意図をもって自由に映像制作を行うことが世間からは求められていますが、時に過剰な表現を追求し、社会に受け入れられないこともあります。また、恣意的且つ不必要に他者等を傷つけることもあります。ですから、自由を認めつつ一定の制限が必要というのが「審査」が必要な根本理由であり、歴史的に見て「審査」が機能してきたことは紛れもない事実であります。このような歴史認識も判断基準の線引きの一助になっていることを付け加えます。
最後に、判断基準については概要を言葉として示しますが、時代によって変わる言葉を、その時々の時勢に合わせ解釈して判断する、その積み重ねが審査判断の適正化となり、行き過ぎを排した社会秩序の維持につながると考えています。
新しい枠組み
発足時に掲げた新しい枠組みを壊し、新たな枠組みを構築してまいります。発足時に考えた米国を例にした在り方は、この国の実情に相応しくないと考え、日本における「審査」についての在り方を再度考察して、その結果を新しい枠組みにしてまいります。
審査に対するエンドユーザーの声を聞くという新しい要素を取り入れ、そのために判断に支障が出るとの懸念の声もありますが、現状の制作サイド主体の審査につきましても、売上を求める側と倫理性を求める側の相克があり、判断がどうしても制作者側に傾きがちであったことを考えても、どのような形態でも支障は少なからず起こるものと考えました。そこで対処策を講じることのほうが重要であると思い、視聴者からの窓口を設けることで、エンドユーザーからの意見やクレームを拾い上げ、即座に対応することが可能となると考えました。
審査済のすべての映像作品の最後にテロップを入れ、そこから意見を聞く仕組みを築き上げています。配信という性格上、販売の差し止め、停止などが瞬時にできることから、問題の映像が市場に出た際にも適正な処置を講じることができる、そんな考え方で進めてまいります。市場に判断を委ね、行き過ぎについては瞬時に対応する仕組みにより、これまでの若干閉鎖的であった判断から、広範な社会性のある判断に移行し、多くの利害関係者が納得する着地点を見出せるものと考えています。
このようにフレキシブルに体制を変化させ、機動力のある審査業務を行うことが、今の時代の社会からの要請だと考えています。外部の声に真摯に耳を傾け、受け入れるべきは受け入れながら、不断に枠組みの構築を続けてまいります。